播磨の国固め

アメノヒボコとの決着

戦いに明け暮れる二柱の神。しかし、開拓した地を守りたい思いと、新天地を求める思い。国が荒れることは互いにとって不本意だった。
黒土くろつち志尓嵩しにたけ。この山でオオクニヌシアメノヒボコは決着をつけることにした。

アメノヒボコ、これ以上の争いを僕は望んでいない。それは君だって同じでしょ?」

「ああ、そうだな」

「だから、ここは誓約うけいで勝負を決めないかい?」

「占いで白黒つけようってわけか。で、何をする?」

「それぞれが、黒カズラ三条みかたを足に付けて投げる。それらが落ちた場所を自分のものにする……っていうので、どう?」

「いいだろう。どんな結果が出ようと、恨みっこなしだぜ」

「もちろん」

二柱は足にカズラを三本巻き付けた。オオクニヌシは慎重に。アメノヒボコは思いきりよく。

「準備はいい?」

「いつでもいいぜ」

「それじゃ……せーのっ!」

放たれたオオクニヌシの黒カズラはきれいな放物線を描き、一本は但馬たじま気多けたこおりに、一本は夜夫やぶの郡に、最後の一本は宍禾しさわの郡の御方みかたの里に落ちた。一方アメノヒボコの黒カズラは、みな但馬の国に落ちた。

「か、勝った……!?」

「チッ……仕方あるまい。かの地に向かうとしよう」

「え、やけにあっさりとしてるんだね!? ……そのほうが助かるけど」

誓約うけいの結果には従うぜ。それに、考えようによっては、あの国がオレ様にとって吉ということだろう」

「ヒボコくん……」

「お前のほうこそ急になれなれしいな!? ……じゃあな」

こうしてアメノヒボコは、但馬の伊都志いづしの地に鎮座した。彼はそこで開拓神として崇敬されることになるのだが、それはまた別の話。
彼の背中を見送った後、オオクニヌシは占拠したかたみとして、御方みかたの里の村につえを立てた。戦いは終わったのだ。

そして。

オオクニヌシみわを醸造した。国造りを終えた祝いの酒だった。

「おわ!! 上手くできたね。国造りも、この酒と同じくらいに!」

そう歓喜の声を上げたから、神酒みわの村といったとか、於和おわの村といったとか。今では伊和いわの村と呼ばれている。

播磨の国固め以後

紆余曲折うよきょくせつを経て、播磨はりまでの国造りを終えたオオクニヌシ御橋山みはしやまで彼は、俵を積んで天に昇るためのハシゴを立てた。天界、つまり高天原たかまのはらへ事の報告に行くことにしたのだった。

国を固め終えたことを伝え、オオクニヌシは天から三坂みさかの峰に下った。彼の家はここにもあるのだ。
それからオオクニヌシは最後の仕上げとして、国境を定めることにした。

「射た矢が届いた位置で占おう」

見晴らしの良い山の上、矢を手に取ると、弓を目いっぱい引きしぼり放った。

「さてと、どこに着いたかな」

飛んでいった矢を探していると、矢田やだの村で、大きな鹿が舌を出して歩いているのに出くわした。

「ありゃ、矢が舌に突き刺さってる。地面に落ちなかったのか」

そんな不思議なことがあったので、彼は正攻法に切り替えた。国中を巡り歩き、山の稜線りょうせんや川谷を境に決めていったのだった。